ディーゼルエンジンはエコになるのか?

投稿日:2023年3月7日 | 最終更新日:2023年3月7日
水素エンジン搭載のスーパー耐久参戦カローラ

水素エンジン搭載のスーパー耐久参戦カローラ

地球温暖化の原因となる二酸化炭素をこれ以上増やさないということをテーマにカーボンニュートラルが叫ばれる昨今、欧州では販売される自動車を全てバッテリーEV(以下BEV)にしようという法律が次々と制定されています。そんな中、トヨタ自動車の豊田章男次期会長は「お客様が選ぶ選択肢を増やす」ということで内燃機関の存続をかけて燃料をガソリンから水素に置き換えるコンバージョンの技術開発をスーパー耐久シリーズというレースを通して積極的に行っています。

ここで問題となっているのは、カーボンニュートラルからの脱炭素社会ということで、これはつまり化石燃料を使わないということです。わかりやすいのは電気で、BEVとなれば太陽光発電や地熱、風力、波力などの自然エネルギー、かなり課題と問題がありますが原子力や常温核融合発電などの化石燃料を使わない発電方法で得た電気で走らせることが可能です。また、水素も燃料としての水素分子の取り出しは一般的には電気分解によって行われるので上記のような化石燃料を使わない発電方法で得た電気を使うことでカーボンニュートラルが達成できます。

同じ内燃機関でもディーゼルエンジンはどうなのでしょうか?

ディーゼルエンジンはその排出するガスに粒状性物質が混ざることで黒煙が発生し大気汚染のやり玉に挙げられたこともありますが、現在の技術では黒煙はほぼ皆無な状態となっています。また排気量やその他条件をガソリンエンジンと同一にして比べれば圧倒的に燃費がいいというメリットもあります。燃費がいいというのは排出する二酸化炭素が少ないということにもなります。そしてディーゼルエンジンの燃料である軽油はガソリンに比べてリッター当たりの単価が10~15円程度安いというのもうれしいところです。

しかし軽油を使うという点がカーボンニュートラルに反しているということで酷評されがちなディーゼルエンジンですが、高圧縮による自然点火という特徴のために実は使用できる燃料の間口が広いことメリットであるというところはあまり評価されていません。

カーボンニュートラルが叫ばれる以前から食用油の廃油を精製してディーゼルエンジンのトラックを走らせるという社会実験が行われていました。ここで使われる食用油の廃油はコンビニエンスストアやファーストフード店、ファミリーレストランなどから個別回収されたもので、この回収は現在でも行われています。食用油は植物由来であり、植物は二酸化炭素を吸って酸素を排出するために、植物由来の食用油廃油精製油はカーボンニュートラルであるとされています。 2021年秋からマツダは食用油廃油精製油に微生物由来の炭化水素を加えた燃料油を用いてスーパー耐久レースに参戦しこの燃料とエンジンの両方の開発を行っています。マツダは新車販売の大半がディーゼルエンジン搭載車となっているためにディーゼル燃料のカーボンニュートラル問題にはかなり本気で取り組んでいます。

食用油や微生物由来の燃料油で走るスーパー耐久のMAZDA3

食用油や微生物由来の燃料油で走るスーパー耐久のMAZDA3

現段階でも食用油廃油精製油に微生物由来の炭化水素を加えた燃料油をそのまま既存のディーゼルエンジンに入れて走らせても問題なく走行が出来ます。デメリットは現段階での製造プラントが実験的なものであり大量生産に向いていないため、1リッター当たりの単価が5千円から1万円になってしまうことです。しかし近々に完成予定の量産プラントが完成すれば価格は一気に1/50~1/100になるともいわれ、将来的な話をすれば、食用油や微生物由来の燃料油の実用化や大量生産の方が水素エンジンよりも早いと考えられます。

唯一のディーゼルミニバン 三菱デリカD:5

唯一のディーゼルミニバン 三菱デリカD:5

カーボンニュートラルで自動車がつまらなくなるとお考えの方も多いとは思いますが、特に日本のメーカーでは自動車の基本たるエンジン技術を廃れさせないために様々な努力をしているのです。

ライター 松永和浩

 

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